クラスの仲間たち

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日がたつにつれ、気が合う連中というのは自然に出来てくるもので、そういう連中と休み時間に話をし、昼飯を共にし、時にはおでん屋や焼鳥屋に誘われるようになった。秋になってそうした仲間の間で「せっかく同じクラスメートになったのだから文集を作ろう」という話が持ち上がり、私も発起人の一人となって皆に呼びかけると、予想外に多くの仲間から寄稿があった。なかなかの出来栄えの論文や紀行文ありで面白かったが、他に個人の「プロフィ―ル」欄を設けようということになり、匿名で書いたものを載せた。これが面白かった。

「へー、あいつこんなところがあったのか、」という発見がかなりあった。私もいくつか書いたが、その中にクラスにいた4名の女性の中の一人が「海釣りが好きでキスをたくさん釣った」と聞いていたので、彼女のプロフィール欄に「キスの次は何を釣りますか」と書いたら、彼女誰からか小生が書いたことを探り出してきて「貴方ですってね、書いたのは、ひどい人ね」といわれた。ひどいのは私についての欄もだ。「ロマン・ロ―ラン狂。大の議論好きで男女を問わず政治、経済論を吹っ掛ける。発音マニアで歩きながらブツブツ練習する。知らぬ者はキ印と間違えかねない。 その彼が最近テニスを始め、ダンスにも興味を示しているというから環境とは恐ろしいもの」だと。ロマン・ロ―ランのことをそんなに持ち出していたのか、自分では控えめにしているつもりだったのだが。文集の名は「ともしび」。これを契機に2号まで出た。私はこの二冊を宝物のように大事にして、今でも手元に置いている。

これを手に取ると自分の青春の一時期が、クラスの友の一人ひとりの顔が鮮やかに蘇ってくる。自分はよき友を持ったとつくずく思う。

小林 元 (こばやし はじめ)

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